数え方(読み方)・単位
一枚 (いちまい) 、一点(いってん)、一片 (いっぺん) 、一シート(いちしーと・ひとしーと)、一綴 (ひとつづり)
解説
通常は「枚」で数えますが、収集品や美術品として数える場合は「点」を用います。使用済みの価値のない切手は「片」で数えることもあります。
意味
①ある定まった目的・用途をもつ物や銭を、その関係から切り放し、別の性格をもつ「切物」とする権利を付与する証文。中世の切符、為替(かわし)、割符(さいふ)、年貢などの貢租の預状(あずかりじょう)などをいう。
*高野山文書‐(年未詳)〔江戸初〕一〇月一五日・善集院栄旻明王院快正連署状(大日本古文書六・一一七三)「学侶方へは、竹入次第、代物なしに、切手にて可進候」
②江戸時代の通行(往来)手形。関所手形(居住地の名主、五人組の証明によって発行されるもの)、手判の類。割符(さいふ)。
*梅津政景日記‐慶長一七年〔1612〕三月一八日「道中の御切手、爰元に無之候」
*俳諧・大坂独吟集〔1675〕上「委細の事はたがひに江戸から 道づれと箱根の切手見合て〈素玄〉」
*浮世草子・世間娘容気〔1717〕六「御関所あって、御切手(キッテ)なくては女のゆく事かなひがたし」
*政談〔1727頃〕一「当時箱根の切手なども、女切手の外は埒も無こと也」
③ある場所にはいることを認めて発行する券。入場券。
*雑俳・田みの笠〔1700〕「おづおづと切手を出す芝居口」
*浄瑠璃・狭夜衣鴛鴦剣翅〔1739〕五「さだめてしろへいで入りのふだか、きっ手かもちつらん、さがして見よと」
*咄本・聞上手〔1773〕狩場の切手「曾我の兄弟、かたき工藤を討んとおもへど、狩場の切(きッ)手なければ忍び入ることならず」
*滑稽本・戯場粋言幕の外〔1806〕上「茶屋から切手(キッテ)ども取らにゃ、門の出入とがむづかしい事な」
*読本・南総里見八犬伝〔1814〜42〕六・五六回「大凡(おほよそ)城を出入するもの、昼は昼の符牌(キッテ)あり、夜も亦夜の符牌(キッテ)あり」
*新聞雑誌‐三一号・明治五年〔1872〕二月「文部省、博物館に於て博覧会を催さる。〈略〉切手を以て拝観することを許さる」
*西洋道中膝栗毛〔1870〜76〕〈仮名垣魯文〉一〇・上「そんなに急いだって、大勢の病人へ切手(キッテ)が渡ってゐるのだから直にといふわけにゃアいかねへヨ」
④営業などの許可証。
*人情本・恩愛二葉草〔1834〕三・七章「昔拙弾(かじ)った三味線が役に立ったも悲しい事、仁太夫さまの切手を貰うて、漸う繋ぐ細い命」
⑤商品に対する前払いの証券。これをもって商品の引き換えができる。商品券。商品切手。
*日葡辞書〔1603〜04〕「Qitte (キッテ)〈訳〉ある物を引渡しさせる証となる紙、文書」
*随筆・北越雪譜〔1836〜42〕初・中「所持のちぢみに名所を記したる紙簽(かみふだ)をつけて市場に持より、その品を買人(かひて)に見せて売買の直段(ねだん)定れば鑑付(キッテ)をわたし、その日市はてて金に換ふ」
*歌舞伎・勧善懲悪孝子誉〔1877〕二幕「取るなと厳しいお触のあった其の樽代も名を替へて、引越し蕎麦の切手で済ませ」
*多情多恨〔1896〕〈尾崎紅葉〉後・九・二「ビスケットの鑵や、呉服の切手まで貰ってある」
*大道無門〔1926〕〈里見〉微症・二「お菓子の切手(キッテ)」
⑥江戸吉原大門の通行証。遊女が外出する時、抱え主の発行するこれを番所に見せた。
*雑俳・柳多留‐二三〔1789〕「切(きッ)手を見せて田楽を喰いに行き」
*洒落本・吉原帽子〔1804〜18〕三「小女郎が従身(みうけ)は五月下旬、エイ難有(ありがたい)大門の切手(キッテ)、青陽の空あをみたる曙より」
⑦金銭預かりの証文。借用手形。金銭切手。
*当代記〔1615頃か〕四「文祿二年八月、自去年奈良町人金借と云事をし出し、指せる無証拠、只切手にて黄金を借引す」
⑧江戸時代、諸大名家の蔵屋敷が米商人に発行した米穀の空売手形。蔵預かりを保証して発行する。米切手、大豆切手などがある。一種の倉庫証券。明治四年(一八七一)にその発行が禁止された。
⑨「ゆうびんきって(郵便切手)」の略。
*太政官日誌‐明治四年〔1871〕一月二四日「今般新式郵便之御仕法御開相成候に付、駅々継立方、切手売捌取締向等、都て駅々地方官員へ申付候条」
*尋常小学読本(明治三七年)〔1904〕〈文部省〉八・一「封書は、目方四匁までは、三銭の切手(キッテ)をはればよいのです」
*或る女〔1919〕〈有島武郎〉前・二〇「また或る時葉子の手許に米国の切手の貼られた手紙が届いた事があった」
⑩明治初年、鉄道など、乗り物の乗車券。切符。
*西洋道中膝栗毛〔1874〜76〕〈総生寛〉一四・下「彌次喜多の両人は此処へ下る切手ならざるゆゑ残し置れまたまた車は合図のすずの音と共に先をさして出る体なり」
*米欧回覧実記〔1877〕〈久米邦武〉一・一〇「賃銭は、上車の後に車を管するもの来り、切手の手合にて収む」
語源
中世ころから、金銭などの受渡しに関する証書として使用され始める。江戸時代になると、通行や営業などの許可証、さらには現在の商品券や入場券にあたるものも指すようになった。

