数え方(読み方)・単位
一刎 (ひとはね) 、一具 (いちぐ) 、一装い (ひとよそい) 、一頭 (ひとかしら)
解説
「刎」は(首を)はねることを意味する語で、兜を数えます。兜飾り一式は「具」「装い」でも数えます。「頭 (かしら) 」は頭にかぶるものを数える語です。
⇒かっちゅう(甲冑)
意味
①頭部防御の武具。軍陣用としては、頭にかぶる部分である鉢(はち)とその下に垂れて首の部分をおおう錏(しころ)からなる。鉢の頂きを頂辺(てへん)、通俗には八幡座(はちまんざ)ともいい、鉢の正面のところを真向(まっこう)という。製法や形状により、多くの種類がある。
*日本書紀〔720〕天武元年五月(北野本訓)「甲(よろひ)冑(カフト)、弓矢を以て郭務〓等に賜ふ」
*新撰字鏡〔898〜901頃〕「〓 加夫止」
*十巻本和名類聚抄〔934頃〕五「冑 説文云冑〈音宙 賀布度〉首鎧也」
*大唐西域記長寛元年点〔1163〕五「象は鞍を解(おろ)さ不(ず)、人は甲(カブト)を釈(ぬ)が不(ず)」
*平家物語〔13C前〕一一・那須与一「しげどうの弓脇にはさみ、甲をばぬぎたかひもにかけ、判官の前に畏る」
②舞楽の楽人や舞人がかぶる、鳳凰(ほうおう)の頭にかたどった冠。とりかぶと。
*栄花物語〔1028〜92頃〕鳥の舞「頭(かしら)にはかぶとといふものをして、いろいろのおどろおどろしういみじき唐錦どもを着て」
*宇治拾遺物語〔1221頃〕五・九「僧正〈略〉『唯着よ』と、せめのたまひければ、かた方へ行て、さうぞきて、かぶとして出できたりけり」
③「かぶとにんぎょう(兜人形)」の略。
*日本歳時記〔1688〕四「木をもって人馬の形をきざみ、又はりこにして采色をほどこし、或甲冑をきせ、剣戟をもたせ、戦闘の勢をなさしめて戸外にたて侍る。是れをかぶとといふ」
*雑俳・柳多留‐五〔1770〕「にわたずみよけよけ兜持て来る」
④男の子の称。その節供には兜人形を飾るところからいう。
*雑俳・柳多留拾遺〔1801〕巻五「奥さまに勝って兜をうみ落し」
⑤「かぶとがた(兜形)(2)」の略。
*雑俳・末摘花〔1776〜1801〕一「おこし元おかぶとでならいやといふ」
*雑俳・柳多留‐五七〔1811〕「槌先へ兜比興な軍也」
⑥かしら。かしらだつ者。
*塵袋〔1264〜88頃〕五「あまたをひとつにすへあつむるを大魁とは云ふ也。智分も心もたらざらんものはさやうの事あるべからず。衆のかふとを云べき也」
⑦紋所の名。柏立て兜、筋兜、立て烏帽子兜、破軍立兜(はぐんだてかぶと)、星兜、龍頭兜(りゅうずかぶと)等の種類がある。
⑧緒の結び方の名称。
⑨頭、また頭の毛をいう、てきや・盗人仲間の隠語。〔日本隠語集{1892}〕
⑩酒屋の店先で、枡酒やコップ酒をあおることをいう、てきや・盗人仲間の隠語。〔模範新語通語大辞典{1919}〕
語源
①「かぶ」は頭の意。「甲」は本来ヨロヒを意味する字であるが、これをカブトと訓むのは「華厳経音義私記」の「甲、可夫刀」(上巻)、「被甲 上〈略〉可何布流、下可夫度」(下巻)、「甲冑 上又為、可夫止」(上巻)にまで遡ることができるが、誤用である。
②平安時代から鎌倉時代にかけて、大鎧(式正鎧)に具足した(1)は星兜とよばれるが、鉢の部分をなす鉄地板矧合せ留めの鋲頭(星)は椎実形に高く鉢表面に突起している所からこの名がある。吹き返しとよばれる顔脇の錏(しころ)を折り返し革を張った部分に、金具を打ちつけたり、真向に鍬形などの飾り金具を備えたものもある。
③南北朝期から室町時代に入ると、より軽便な胴丸鎧や腹巻が流行し、それに伴って(1)も、星を略して矧合の筋を立てた筋兜が主流となる。鉢もやや大型化し、より衝撃を防ぐような機能が向上する。
④戦国時代以降、鉄砲の伝来に伴って、伝統的な甲冑とは全く面目を異にする、いわゆる当世具足が出現すると、(1)も、前立物や形状自体に、自己を顕示する独自の意匠が凝らされるようになる。伊達政宗の三日月型の前立や、徳川家康の大黒頭巾兜などはそれである。

