きょうげん【狂言】

《スポンサードリンク》
 

数え方(読み方)・単位

一番(いちばん)

解説

意味

①道理にはずれたことばや動作。また、常軌を逸したことばや動作。たわごと。

*正法眼蔵〔1231〜53〕礼拝得髄「かくのごとくのことばは、仏法をしらざる痴人の狂言なり」
*謡曲・自然居士〔1423頃〕「鼓をまた打ち、簓(ささら)をなほ摩り、狂言ながらも、法の道、今は菩提の、岸に寄せ来る
*浮世草子・けいせい伝受紙子〔1710〕二・三「世悴(せがれ)が狂言を申たにお心を付られ、ふ審なとあって必他所でお咄しは御無用に頼入」
*人に与へて煩悶の意義を説く〔1905〕〈綱島梁川〉「嗚呼、古聖一切の悟なるもの、もし悉く自ら欺き人を洽く荒誕不稽の狂言妄語なりきとするも」
 
②(─する)わざとふざけて、おもしろおかしく言うこと。また、そのことばや動作。冗談。ざれごと。

*明月記‐文治四年〔1188〕九月二九日「連歌和歌等、新中納言尾張等相加種々狂言等」
*梵舜本沙石集〔1283〕三・八「遁世の遁は時代にかきかへむ、昔は遁今は貪、此中にも誠ある人も聞るに、狂言はばかりあるにや」
*源平盛衰記〔14C前〕三四・東国兵馬汰事「正直にては能馬はまふくまじかりけりと狂言(キャウゲン)して、打連てこそ上りけれ」
*義経記〔室町中か〕五・吉野法師判官を追ひかけ奉る事「『過は常の事、孔子(くじ)のさはれと申す事候はずや』ときゃうげんをぞ申しける」
*日葡辞書〔1603〜04〕「Qioguenuo (キャウゲンヲ) ユウ」
 
③(─する)猿楽本来の滑稽な物まねの要素が洗練され、室町時代に発達したせりふ劇。また、それを演ずること。同じく猿楽から生まれた、まじめで幽玄味をもつ能に対するもの。江戸初期に大蔵、和泉、鷺の三流が揃い、能とともに幕府の式楽として続いたが、明治時代に鷺流が亡びた。種類としてはそれ自身独立して演じられる本狂言と、常に能に含まれた形をとる間狂言(あいきょうげん)の二つに分けられる。能狂言。

*大観本謡曲・歌占〔1432頃〕「この一曲を狂言(キャウゲン)すれば、神気が添うて現なくなり候へども」
*御湯殿上日記‐延徳四年〔1492〕二月二一日「くせまゐちこわかしゆよくまふよし、きやうけんする物申」
*咄本・醒睡笑〔1628〕七「禁中に御能あり。狸の腹鼓(はらづつみ)を狂言にする」
*仮名草子・仁勢物語〔1639〜40頃〕下・七七「山姥(やまうば)の終りして後の狂言は腹筋切れて笑ふなるべし」
*十善法語〔1775〕五「わが邦のかる口誹諧狂言など、一切時ならぬ言、処不相応なることば」
 
④「きょうげんかた(狂言方)(1)」の略。
*申楽談儀〔1430〕能の色どり「次第の後、軈謡ふべし。ただ、脇の為手(して)も、きゃうげんも、能の本のまま、何事をも言ふべし」
 
⑤芝居。また、その演目。歌舞伎狂言。

*浮世草子・好色五人女〔1686〕一・五「其比は上方の狂言(キャウゲン)になし、遠国村々里々迄ふたりが名を流しける」
*咄本・鹿の巻筆〔1686〕一・三「されども、敵討(かたきうち)のきゃうげん、せりふをいふ役なれば」
*航海新説〔1870〕〈中井弘〉上「昨夜舟中雑劇(キャウゲン)をなし、以て旅客を慰む」
*文明田舎問答〔1878〕〈松田敏足〉学校「魁劇(たてやく)ばかりでも劇曲(キャウゲン)はできぬといふもの」
 
⑥本当のように仕組むこと。人をだますために仕組んだことがら。こしらえごと。

*浮世草子・傾城色三味線〔1701〕江戸・二「態(わざ)と正体(しゃうだい)なく見せて、思ひあいしおのおのを床に入れべしと、しばらく狂言(キャウゲン)をいたした」
*浮世草子・世間娘容気〔1717〕四「と跡かたもない狂言(キャウゲン)こしらへ、しくしく泣てかたれば」
*黄表紙・御存商売物〔1782〕中「このきゃうげんがあたったら、よきに取立てて得させんといふゆへ」
*洒落本・通言総籬〔1787〕一「じつは、ばんしんとのなれ合で、ゑん二郎をいろじかけでよぶきゃうげん、此ごろはやる手也と、さとっていれば」
*火の柱〔1904〕〈木下尚江〉一九「彼の松本が例の猜忌と嫉妬の狂言なんだろう」
 

語源

①①の意味では、古く中国の文献に見られるが、日本では、右の意味に加えて、②の冗談・ざれごとの意味を示す例が多くなる。
 
②室町時代の演劇としての(3)は、この冗談・ざれごとを軸とする演劇という意味に基づくものである。江戸時代の歌舞伎が③との交流を持ちながら発展したところから、その出し物に狂言の名称が用いられ、両者を区別するために、前者は能狂言、後者は歌舞伎狂言と呼ばれる。
 
③「狂言」が演劇と結びつくと、観客の興味を引くための工夫に伴って虚構的部分が多くなり、江戸時代には⑥の意を生じた。

《スポンサードリンク》
 



数え方人気 [TOP50]ビジネス文書数え方
季節用語の数え方名数一覧(1~100)