数え方（読み方）・単位
一本（いっぽん）、一箱 (ひとはこ) 、一缶 (ひとかん) 、一カートン（わんかーとん・ひとかーとん）
解説
タバコの小売単位は「箱」「缶」「カートン」など。吸殻は「本」、灰皿は「個」「枚」で数えます。タバコの灰を、土ぼこりを表す「塵 (じん) 」で数えることがあります。パイプは「本」、キセル（煙管）は「管 (かん) 」で数えます。
意味
①ナス科の多年草、温帯で栽培すると一年草となる。南アメリカ原産で、世界各地で栽培されている。高さ一・五〜二メートル。全体に粘り気のある腺毛を密布。葉は短柄をもち楕円形で先はとがり縁はしばしば波状、長さ三〇センチメートルぐらいになる。初秋、茎の上部に総状花序を出し、多数の花をつける。花は淡紅色で細長い漏斗形、長さ約三〜五センチメートル。
先は五裂して裂片はとがる。果実は卵形で全体が萼（がく）に包まれ、ごく小さな種子が多数含まれる。葉はニコチンを含み、食べると猛毒だが、乾燥して刻み、喫煙に用いる。また、煎汁（せんじゅう）は農業用の殺虫薬になる。原産地では古代から吸煙に利用され、一六世紀初頭にスペインに伝わり、世界じゅうに急速に普及、日本へは安土桃山時代に輸入された。タバコぐさ。タバコそう。おもいぐさ。わすれぐさ。学名はNicotiana tabacum ▼タバコの花《季・秋》
＊浮世草子・諸国心中女〔１６８６〕四・四「また相思草（タバコ）といふ物も、異国にて恋にししたる女のつかより生初（はへそめ）し物とかや」
＊俳諧・蕪村句集〔１７８４〕秋「わたつみやたばこの花を見て休む」
＊日本植物名彙〔１８８４〕〈松村任三〉「タバコ 烟草」
②①の葉を干して発酵させて作った嗜好品。そのまま、または、細かく刻んで火をつけて煙を吸う。紙巻タバコ、刻みタバコ、葉巻、嗅ぎタバコ、噛みタバコなどがある。日本へはタバコの植物体よりはやや早く輸入されたものと思われる。
＊慶長日記‐慶長一二年〔１６０７〕二月二九日「此頃たはこと云事はやる、是は南蛮より渡と云。云 広き草の葉を割、火を付、煙をのむ」
＊俳諧・鷹筑波集〔１６３８〕一「次第次第につまる世の中 たばこをばのめどさらへぬきせる竹〈玄康〉」
＊評判記・色道大鏡〔１６７８〕二「手きざみのたばこを外へもつに」
＊滑稽本・東海道中膝栗毛〔１８０２〜０９〕二・下「あのがきゃアまだ、たぼこもいれないヤア」
＊小学入門（甲号）〔１８７４〕〈民間版〉「水と乳汁は健康をたすけ、酒と煙草（タバコ）は養生に害あり」
語源
①古い例として、「鹿苑日録‐文祿二年七月九日」に「往徳芳喫斎如常。晩来往宗与宅。烟草携之」とあるが、「えんそう」と読んだか「たばこ」と読んだかは明らかでない。
②語源は、南米ベネズエラ付近のトバコ島、カリブ地方のパイプの名、また南米から伝えたスペイン人が薬草と考え、スペイン語の薬草を意味する語からついたなど、諸説あって一定しない。漢字で「淡婆姑」「淡芭菰」「丹波粉」「多葉粉」などをあて、「延命草」「相思草」「長命草」「返魂草」「糸煙」「わすれぐさ」「おもいぐさ」などともいった。しかし、「煙草」「烟草」をあてるのが一般的で、江戸・明治期にはこれを音読してエンソウともいった。
③日本への伝来についても諸説あるが、商品としてのタバコは植物としてのタバコより早く、天文一二年（一五四三）以降ポルトガル人が伝えたとも、天正年間（一五七三〜九二）に伝わったともいわれる。植物としてのタバコは慶長六年（一六〇一）マニラからポルトガル人宣教師Ｊ＝デ＝カストロが徳川家康にその種子を献上したのが最初であり、九州の指宿・長崎などで栽培が始まった。以後急速に喫煙の風習が広まったが、その普及はタバコが当時流行していた梅毒の特効薬とされていたことと関連する。徳川幕府は米の生産への影響や火災の原因となるところから、慶長一二年以降数次にわたり喫煙禁止令を出し、栽培も禁止したが効果なく、寛永年間（一六二四〜四四）以降喫煙は再流行し定着するに至った。
④喫煙方法は多様だが、江戸時代を通じて行なわれたのは煙管を使う刻みタバコで、紙巻タバコは明治初期に作られ、同一〇年（一八七七）頃から流行した。明治三七年には専売制となり、国家財政の重要な支えとなった。なお、専売制は昭和六〇年（一九八五）に廃止された。
